ぽつりと空いた席の寂しさ「ある星の汽車」
週の初めのサッカー観戦によって、今週はずっと体内時計が狂ったままのくるみです。こんにちは。あっという間にいつも通りの10代の息子とたった1回の不規則な生活からなかなか立ち直れない私…

朝、ウォーキングをしていると、たくさんのカラスを見かけます。
以前、頭にカラスが乗った(蹴った?)ことがあり、その時の衝撃が忘れられません。それは一瞬でしたが、帽子の上に、大きな鳥の足が頭をつかむ感触とずっしりとした生命体の重みを確かに感じました。
それからというものカラスの存在が恐いので、カラスが攻撃するという黒い色を避け、明るい色の帽子と服を身につけて、なるべく目が合わないように、離れたところをそそくさと通り抜けるようにしています。
彼らがゴミ捨て場のネットから飛び出したゴミを見つけて散らかしながら、道の真ん中を堂々と歩いているときは、ルートを変えたりもします。
バサッと大きな羽音を立てて飛び立ち、屋根や木の上で何羽かでカアカアと競い合うように声を出し合っているときは、コミュニケーションをとって私への攻撃作戦を立てているのかもしれないという疑心暗鬼に襲われています。
そんなこんな毎日に、カラスなんて減ればいいのに、と思ったりするわけなのですが、果たしていったい、カラスは統計的に増えているのか、活動地域が変わったのか、もしくは昔からこんなものだったのか…どうなんでしょうね。
そして、もしも住宅地のカラスを減らす対策をするとして、それはどの程度ならばより良い選択になるのか…
そんなことについ考えてしまう今日の絵本はこちら。
ぼくたちは いつまで のっていられるの?
大きな月と数々の星が照らす広い大地を、1本の汽車が煙をあげながら走っています。その汽車に乗り、旅をするハンチング帽をかぶった少年とお父さん。車内を見渡すと、かっちりとした服を着ていたり、長靴だけを履いていたりする、個性豊かなたくさんの動物のお客さんが座っています。乗客は1人、また1人と下車していき…。突如、永遠の不在をそっと差し出され、心が揺れ動かされる絵本です。
表紙には、アンバーゴールド色の枠に書かれた題字があり、鳥のような生き物が、白手袋にステッキ、開口部が口金型の大きなバッグというヨーロッパの紳士のような出で立ちで車内に座っています。窓には月とたくさんの輝く星々が見えます。クラシカルな重厚感がある絵に心惹かれました。
広大な大地を汽車が進んでいく様子は、小さい頃に見た銀河鉄道の一場面を想起させます。ある星の、という題名のせいもあってか、地球のどこかの風景というよりは、どこかの惑星の地表という印象を受けました。
少年が車内を観察して回ると、そこには一風変わった動物たち。それぞれがそれぞれの過ごし方で、席に座っています。
(ここからネタバレを含みます。)
汽車が「1681」と書かれた駅に停車すると、表紙の鳥が下車します。カルバリアという植物の鉢を抱えたまま。
わたしの なまえは モーリシャスドードーと いいます。どうか おげんきで
ここで、ハッとします。下車=絶滅なのだと。
汽車は宇宙船地球号。そこから降りるということは、もう二度と会えない永遠の別れを意味します。
次に降りたのはブルーバック。青みがかった美しい毛を持った、シカのような動物です。
それから次々に動物たちが下車していきます。
同じ汽車でひと時を一緒に過ごした乗客が、少しずつ降りていき、永遠の空席が残るという物語なのです。
そろそろ わたしも おりなきゃ いけないのかもしれない
ホッキョクグマが言います。動物園で見たことのある、イラストなどでも毎度おなじみのシロクマやゾウ、キリンなども絶滅危惧種です。
地球では、過去5回、大きな絶滅期があったようなのですが、今はまさに、第6番目の絶滅期の真最中らしいのです。
過去の絶滅は、気候の変動、噴火、隕石の衝突などが原因で起きた絶滅ですが、今、私たちが直面している絶滅は、他でもない人間活動によるものなのだそう。
例えば、シカが好きな植物だけを食べ尽くし、住んでいる環境の植生を変えてしまう話があるように、きっと他の動物だって、自分勝手に生きているのだと思います。けれども、それぞれが与える影響はたかが知れているので、地球中に影響を及ぼすことはありません。食べ尽くした植物がなくなってしまうことによって、今度はシカ自体が飢えによって減少します。そして、またシカにあまり食べられなくなった植物が増えていき…と循環できるわけです。
一方で人間は、知恵を使って道具を作り、知識を伝え、巨人の肩に乗って、次々に技術を発展させ、自然を使って自分たちにとって都合の良いものを生み出してきました。その力は幸か不幸か、一人一人の手には負い切れない程の膨大な力になり、それによって、地球上の環境は急速に変化しています。
それ自体は発展であり、成長であり、人間の知恵の産物として誇らしいことであり、仕方のないことだとは思うのですが、そろそろ本気で力を合わせて、その偉大な知恵を使わないと、汽車には誰も乗っていられなくなってしまうかもしれません。私たちさえも。
社会問題として、今では聞き飽きたような人類の課題ではありますが、この絵本を読むと、頭でなく心に直接届きます。
空席だらけの汽車に乗って進むのは、とても寂しいです。
迷惑だとも思えるカラスだってよく見ると、黒々とした艶のある羽は美しく、身体の小さなカラスの動きは小鳥のそれのように愛嬌があります。この絵本のアルバトロスを迎える動物たちのキラキラした瞳を見て、大きさ姿かたちがそれぞれに違う生き物の多様性の豊かさに、ただ心が動かされてしまいました。
みんなちがって、みんないい。
生物多様性の輝きを再確認できる絵本です。みなさまもぜひ。
命をつなぐ貝のネックレスにも注目!

