どろぼうなのにすてき?「すてきな三にんぐみ」
ここ最近、英語を勉強し直しているのですが、新しい単語がなかなか覚えられません。日本語でさえ、「あれ、ほら、あれだよ!あれ!」みたいな現象が増えているのに、新しい単語なんて覚えられるのか疑問なくるみです。こんにちは。

この夏、もずくと「大どろぼうの家」(立川のPLAYミュージアムの展示)に潜入してきました。
いろいろな形の窓を物色しながら侵入すると…
世に知れ渡る大どろぼうたちの肖像画が飾られた緑の回廊。
大どろぼうを大どろぼうたらしめたる知識の源や変装アイテムを垣間見れる青の応接間。
たくさんの大どろぼうファンによる、大どろぼうファンのための大どろぼうにまつわる絵本やアニメ、ゲーム、映画グッズを集めた赤の隠し部屋。
大どろぼうが盗んだ、絵本作家や芸術家の作品に出会える白の小部屋。
同じく、盗み集めた谷川俊太郎さんの詩が幻想的に輝く銀の庭。
カラス界の大どろぼうが集めたアレが円盤状に広がる黒の壁。
監禁されたヨシタケシンスケさんが命をかけて描いた大どろぼう育成本の原画が見れるトリコロールの廊下。
当時はあんなによく見たはずのアレコレ、たぶん誰かに盗まれてしまったアレコレ。盗んでたのは大どろぼうだったのか!そんな気付きのある光の蔵。張り巡らされたレーザーをすり抜けて、脱出っ!
期待していた以上に楽しく、小3のもずくも大満足でした。
「嘘つきはどろぼうのはじまり」だとか、「このどろぼう猫!」だとか、何となく小狡い印象のあるどろぼうだけれど、それが打って変わって「大どろぼう」となると、急に趣きが変わります。
小さなものは狙わない。
狙うは、皇室の王冠だとか、値も付けられないようなこの世に一つの美術品だとか。
一級の警備をかいくぐる知恵や発想、度胸。
盗品を見極める審美眼と高い美意識。
強きを挫き、弱気を助ける信条。
なんてかっこいい!
大どろぼうの家に忍び込んでからというもの、大どろぼうの魅力にとりつかれている私。
そんな今日は、言わずと知れた大どろぼうの絵本をどうぞ。
どろぼうなのに、すてき?
黒マントに黒帽子のギロリとした目の3人組は、夜になったら馬車を襲い、宝を盗んでため込んでいました。ある夜、馬車から女の子を連れ帰った3人組は、女の子に宝の使い道を聞かれ…。何十年も前から愛されている大どろぼう絵本です。
目深にかぶった帽子から見える鋭い目をした3人。
青と黒に赤いまさかりが映える印象的な表紙に、凄みのあるフォントの「すてきな三にんぐみ」
そして、表紙をめくると、紙芝居が始まるような、お芝居の口上のような出だし。
あらわれでたのは、
くろマントに、くろい ぼうしの さんにんぐみ。
それはそれは こわーい、どろぼうさまの おでかけだ。
世界観を出して読みたくなる、味のある文章です。
どろぼうなのに、すてきなの?

黒づくめの恐い存在として描かれているどろぼうですが、女の子を連れ帰る部分では、
ティファニーちゃんを だいじに かかえ、
とあり、ギロリとした目はどこへやら、優しい目元で抱きかかえるどろぼうの姿が。
(だんだん、すてきに見えてきたよ!)
そして、3人が選んだ盗んだお金の使い道は、子どもを助ける活動。
しかも、救うのはどっさり、たくさんの子供たち。
やるからにはどーんとやる、その大胆さに惚れ惚れします。
窃盗はもちろん犯罪なのだけれど、強い者たちから奪ったものを、弱い者たちに配分するという英雄的存在として、大どろぼうたちにロマンを感じてしまうのです。
鼠小僧やルパンやオーシャンズ11…思えば、私たちは昔から大どろぼうに魅了されてきました。
きっと、法律や社会の仕組みでは救いきれない弱者を、どうにかしなきゃと思っても、自分の力ではどうにもできない世知辛い現実世界に、もどかしさや憤りを感じているのだと思います。
だから、危険や法律をおかしてまで、自分の信念に真摯に向き合う姿に惹かれてしまうのです。
大どろぼうになるというのは、常識や周りの目にとらわれずに自分の信じたものを貫いて、生きていくということ。
「大どろぼうのいえ」展もおすすめです。(2025/9/28までやってます)
私もいつかは大どろぼうに!?
