きっといつか思い出してまた手に取りたくなる絵本「ルピナスさん」
暑い夏は得意じゃないくせに、これぞ夏!というモクモクとした雲を空に見つけて無条件にワクワクしてしまったくるみです。こんにちは。

(リライト記事・2019年の前ブログより)
絵本を選んでいると本当にいろいろなタイプの絵本があることに日々驚かされます。
ユニークなもの、サプライズがあるもの、教訓的なもの、世界を知ることができるもの、怖いもの、感動するもの…
普通の本でもたくさんのジャンルはありますが、絵本では、内容に加えて、絵の世界観があり、さらには、紙の厚さやサイズの違い、穴が空いていたり飛び出したり質感が違ったりの仕掛けがあるものもあり、一層多様な広がりを感じます。
そんなたくさんの絵本の中でも、うちの子たちが好きなのはユニークな絵本や絵探しなどがある参加型の絵本です。
先がどうなるのかハラハラドキドキするストーリーものも好きです。
ただ、私としては、特に惹き付ける展開はないけれど内容が深く、しっとり読む絵本も読み聞かせたくて、子供たちには喜ばれないとわかっていても、たまに読んでみます。
その時はなんだかよくわからなくて面白くない話でも、なぜだか心にひっかかっていて、時が経ってから心の水底でキラリと光り、掬いたくなるような、そんな力が絵本にはあるような気がするのです。
この絵本もそんな1冊だと思います。
良く、でも、正しく、でもない。美しく。
今はもうおばあさんのルピナスさんは、幼い頃におじいさんと「遠い国に行くこと」「海の近くに住むこと」そして、もう1つ大切な約束をしました。そんなルピナスさんが送ってきた人生を静かに辿る物語です。
色使いがどこか寂しげで優しい印象の絵です。
美術のことは全くわからない私ですが、どのページも心に残る素敵な絵だと感じました。
もずくとこむぎはルピナスの花のページに惹かれ、「〇〇(もずく)ちゃんはむまさき(紫)がいい!」などと叫んでいました。(当時2歳)
ルピナスが咲き乱れる風景はとても美しいです。
アリス、ミス・ランフィアス、頭のおかしいおばあさん…様々な呼称で呼ばれながら、人生を送っていくルピナスさん。けれど、しっかりと人生の目標、生きる意味を忘れてはいません。
おじいさんとの約束を果たすことに時間を捧げる決意のルピナスさんに、ハッとさせられます。
たくさんの人や文化に触れて豊かな感性を育て、静かで質素な暮らしにたどり着き、世の中を美しくするために何かをする。
そんなルピナスさんの生き方に、私はこれまで世の中を美しくする何かをしてきたのだろうか、これからすることがあるのだろうか、と問いたくなります。
世の中を美しくする、という表現がとても気に入りました。
良くする、でも、正しく導く、でも、役に立つ、でもなく、美しくする、ということ。
表面的な美醜ではない、内面のバランスがとれた、深い平穏があり、じんわりと温かくなるような優しさが「うつくしく」という言葉に含まれているような気がします。
「良く」「正しく」などが持つ、勝手な正義感や、やってやった感がそれほどなく、ただ心がほんわかする感じを私は受け取りました。
ルピナスさんのように、生き方の1つの指針としてもいいかもしれません。
子供たちには案の定不評でした。
「今日はそんなに面白くなかった」とこむぎにはっきりと言われてしまいました。
けれど、きっといつか光を放つ日が来ると思う、素敵な絵本です。
大人の方も是非。
うつくしく生きたい。具体的に何をすればいいのかは全然わかんないけど…
