古き良き手仕事と物々交換「ペレのあたらしいふく」
ここ数年で着心地が良い服しか着なくなったくるみです。こんにちは。
季節の変わり目になる度に、子供3人分の衣替えが大仕事で、憂鬱になります。
自分の服の衣替えも以前は1日がかりだったのですが、数年前に「人生がときめく片付けの魔法」と「フランス人は10着しか服を持たない」を読んで一念発起し、処分した結果、少しは楽になりました。
が、継続できず、最近また増えてきています…
子供の服も減らしたいのですが、何しろ3人分ですし、いただいた服やサイズアウトしたけど下の子が着れそうな服など、狭いスペースにぐぐっと押し込んでしまっています。
それにしても、世の中には服が溢れていますよね。
おそらく私のように家に服をため込んでいる人も多いだろうし、買い物に行くと、回りきれないほどの洋服屋さんがあり、それぞれのお店には所狭しと服が置いてあります。
どこでこんなにも布や毛糸や皮が生産されているんだろう。
実際の綿花や麻の植物を見たこともないような私が、こんなに簡単に洋服を手に入れることができていいのだろうか。
そんな違和感をおぼえる昨今。
こんな絵本はどうでしょうか。
新しい服をありがとう
羊を飼っているペレは、ある日羊の毛を刈りました。その毛を、すき、糸に紡ぎ、染め、織り、仕立て、たくさんの工程を経て、ようやくペレは新しい服を手にします。ペレと一緒に、ウールの服ができるまでを体験する絵本です。
魚が切り身の状態で泳いでいると思っている子供がいる、なんて話もありますが、この工業社会では原形がわかる物の方が少ないのではないでしょうか。
食品、プラスチック、金属、布製品、陶器。
あらゆるものを百均でも手に入れることができます。
それぞれの製造工程を見ることはほとんどありません。
この絵本では、ウール素材の洋服ができるまでの工程を知ることができます。
描かれているのは全て手作業。おそらく今ではほとんど機械化されている工程を人の手で行っているのです。
人の手で作り上げられていく様子に、物のありがたみを感じずにはいられません。
もうひとつ、この絵本で素敵だと思うことは物々交換。
ペレは工程の1つ1つを家族や近所の大人にお願いしますが、子供だからといって、ただでやってもらっているわけではないのです。
お願いと引き換えにペレは頼まれた仕事をします。サービスとサービスですが、いわゆる物々交換です。妹のお世話だったり、薪を運ぶ仕事だったり。
何かをもらうために自分のできることをする。
お金を介していないため、社会との関わりのシンプルな構造がよくわかります。
最後の羊さんとのやりとりも心温まります。ペレはこの洋服をとても大事するんだろうなぁ。
子供たちは終始じーっと聞いていました。
何を感じたのでしょうか。
分業化、工業化が進み、物が溢れ、社会との関わりの意味を見失いがちな現代で、子供たちの心に温かい何かが残っていたら嬉しいです。
青い表紙と青い服が印象的な絵本です。
題字に侵入しているひなげしの花がたくましく、健気で好きです♪