はやいは正義?「はやくはやくっていわないで」
歯医者さんがもずくの口の中を見ながら「何歳だっけ?」
「44…」と言いかけて、寸前で「8歳です」と答えたくるみです。こんにちは。
とんだ恥をかくところでした。あぶないあぶない。
わが家には3人の子どもがいるのですが、三者三様、性格はそれぞれです。
中でも、真ん中の娘、こむぎは何をするのものんびり。ちゃちゃっと何をするにも速い妹のもずくとは大違いです。
食べるのものんびり。宿題するのものんびり。歯磨きも、学校の用意も、何もかもがのんびり。
ある日の朝。
学校に遅れそうで、本人も珍しく時間を気にして準備している最中のこと。
こむぎはファイルケースにプリントを入れようとしていました。
もずくならプリントをねじ込んでケースは半開きのままランドセルに詰め込むような場面ですが、こむぎはのん気に「はい、これ食べてね。パクパク」とファイルケースをペット、プリントを餌に見立てて、プリントを折れないように丁寧にケースに入れていたのです。
なんだか力が抜けてしまいました。
急いでいるときになんでそんな余裕が??
何をかくそう、そんな私も決してテキパキしてるとは言えず、のんびりな方です。
けれど私は急かされる状況に焦りやストレスを感じてアワアワしてしまうので、堂々とのんびりしているこむぎの姿に尊敬すら感じてしまいます。
彼女は時間より大事な何かを持っているのかもしれません。
人に合わせるために、はやく。
より多くの物を生産するために、はやく。
たくさんの物を手に入れるために、はやく。
同じ場所に行くなら、できるだけはやく。
無駄な時間を省くために、はやく。
はやく。はやく。はやく。
本当に、はやいことは正義なんでしょうか?
はやく生きて、空いた時間にも、さらにたくさんの物を詰め込んで。
やるべきこともやりたいこともどんどん増えて、理想と現実のギャップに疲弊して。
はやく仕事をすることに命を削ってお金を稼いで、人との関係はギスギスして、心はトゲトゲして、身体はくたくた。
のんびり屋は、自分らしさを否定され、変革を求められる場面もしばしばあります。
効率よく、速いことで、得られた素晴らしいものも、もちろんあるのだろうけれど。
そろそろ気付いてもいいのではないかな?
必ずしも、速い工程で素敵なものが生まれているわけではないこと。
生き急いだ先には、等しく死があるだけということ。
寄り道や、無駄と思えるものにも、価値があること。
なにより、のんびりしたい人にとって、どんなにかこの世界が生きにくく感じられるかということについて。
そんなことを考えるきっかけになる今日の絵本はこちら。
はやいは正義?
小さな船が広い海を進んでいきます。魚たちや、氷や、岩礁を背景に進んでいきます。ポップな色遣いのかわいい絵に添えられた、小船くんの心の中から漏れ出てくる小さな訴え。はやくはやくっていわないで。くらべないで。生きる上で本当に大切なことは何なのかを私たちに問いかけてくる絵本です。
くらべられると ドキドキする
ドキドキすると どうなるの
どきどきすると ひんやりする
どきどきすると ちいさくなる
顔の描かれた小さな船は、子どもたちのようです。少し困ったような顔をして、いろいろな環境の中を進んでいきます。
この小船の声は、みんなと同じ速さでできないことで、急かされ、非難され、追い詰められていく子どもたちからの訴えのよう。
いや、まって。子どもたちだけ?
誰かと同じようにできないことでビクビクしたり、自分が異質と見られることを恐れるあまり、周りの目を常に気にせずにいられない大人のようでもあるのでは?
みんな、そのままでいいんだよ。
多かれ少なかれ、誰もができないことや人と違うことがあるけれど、どんな人も等しくそのままでいいんだよ。
そんなことを気付かせてくれる絵本です。
はやくはやくってこむぎに言うの、半分くらいにしよう。(0は無理だけど…)